いつもの金曜、午後5時半

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 私たちは駅についた。  次の電車まで間もなく、どうやら終電らしかった。  彼は、わざわざ改札をくぐって、ホームまで送ってくれたのだった。 「危ないところでしたね。  もうちょっと絡まれてたら、帰れないところでしたよ」  絡まれてた。  そのワードが、胸をしめつける。  ふと、また言葉が、溢れた。 「わたし……、好きだったんです、彼のこと」 「……そうですね」 「でも、あんな人だった。  ……わたし、見る目がないんですかねぇ」  そう言ってわたしは自分を嘲るように笑ってうつむく。  駅のアナウンスが、電車の到着を予告する。  しばしの間、沈黙が続いた。  困らせてしまったかな、と思い顔をあげると、初瀬さんはすこしいじけたような顔をして、そっぽを向いたところだった。  ……なんでだろう。そう思っていると、彼はふいに口を開く。 「まぁ、たしかに、明日香さんは男を見る目がないのかもしれませんねー」  そうして肯定されると、それはそれで若干もやもやする。 「なっ……悪かったですね、見る目がなくて」  すると彼は、ちょっとだけ顔をこっちに向ける。  少年のようにいじけた横顔が、いつもの初瀬さんではないように思えた。 「そうですよ。  逆にこんなにいい男が、近くにいるのに」
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