いつもの金曜、午後5時半

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 それから、一週間。  悔しいことに、わたしは彼のことで頭がいっぱいだった。  左隅のカレ、土森のことは、すっかり頭から抜けていた。  初瀬さんに会いに行こうと思えばいつだって会いに行けたのだが、それはかなり勇気のいることで。  わたしのなかで、わたしの知ってる初瀬さんが、グルグル回る。  シェイカーをふるかっこいい初瀬さん。  わたしの言葉に照れるかわいい初瀬さん。  冗談言って笑わせてくれる面白い初瀬さん。  わたしのどんな話でも、ひたすら茶化さないで聞いてくれる、どこまでも優しい初瀬さん。  ……そして、あのときの、真剣な顔の初瀬さん。  あぁ、もう、これで落ちない女の子、どこにいるんですか。
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