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《Bar Harvey Wallbanger》
店内には、小気味のいいジャズの調べが流れる。
客の気配を察知した初老のマスターが、
「いらっしゃい、明日香さん」
と静かに優しく言った。
ここの雰囲気はいつも、わたしをオトナな気分にさせる。
「こんばんは、マスター」
そう言ってわたしは、手近なカウンター席に腰を降ろした。
辺りをキョロキョロと眺める。
……あの人は、どこだろうか。
そんなわたしの様子に気づいたのか、マスターは優しい口調で声をかけた。
「初瀬くんならちょっと買い物に行ってもらってるよ。
もうすぐ帰ってくるとは思うんだけどねぇ」
「あ、やっぱり、ばれてましたか…」
そうわたしがいうと、彼はニッコリと笑った。
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