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尚も男の子は泣きながら扉を叩き続けている。
でも固く閉ざされた扉は開かない。
何だろう。
何だか…
何だかむしょうに腹立ってきた。
「ユーリスって言うんだね、勇者の弟は」
近寄る私に男の子は怯える。
大丈夫、怖がらせてごめんね、と微笑んで男の子の頭を撫でようとすると…
バッ、とよけられた。
怯える瞳に少し寂しい気持ちになる。
「ねえ、ユーリスさん。今あなたの町はピンチなの」
自分で言っててお前が言うな!って思うけれど本当なんだから仕方がない。
「あなたは、嫌じゃないの?助けなきゃって、思わないの?あなたがでてくるのなら…いや、たとえでてこなくても、私が暴れているディロアをとめる。でも、あなたは、ここにいたままでいいの?」
「えー。やだ。何言われても出ない」
「ユーリスは筋金入りの自宅警備員だよって、ママが言ってた」
男の子がポツリという。
「でもエリク様の弟だからきっと強いよ」慌ててフォローする姿が可愛らしい。
ユーリス…勇者の弟にしてまさかのニートか
「ねぇ、ユーリス。そこにいたままでカッコ悪いとはおもわない?」
「お前は誰だよ」
「私はえーと。うーん…まおうです」
「魔王!?だったらなおさら出ていかねーよ!」
「…この…もういい!見損なった!」
あまりの自宅警備員っぷりにイライラして、私は
ドアをドン、と叩いて踵を返す…ただそれだけのことをしたはずだった。
でも。
バアァン!と大きな音がして木の大きなドアは凄い音を立てて吹っ飛んだ。
ドアは勢いそのままに家を貫通していく。
2軒、3軒、4…
私は数えるのをやめた。
見れば勇者の家からまっっすぐドアの形の空洞ができていた。
ゆっくり振り返ると
男の子のビックリ仰天した顔が目にはいり、男の子の瞳に映った超マヌケな面をした自分の顔にビックリした。
そして…
「な…」
震える声にまた家の方を向くと、そこには一人の青年が尻餅をついてこちらを見ていた。
目が隠れるほどの長い前髪。
ボッサボサで段違いの後ろ髪。
それに不釣り合いな小綺麗な服。
髪の隙間からチラリと見える、髪のいろと同じ緑の瞳がわずかに揺れている。
ビックリして動かない彼と私の間に訪れる妙な沈黙。
私はゆっくりそんな彼に近づいた。
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