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しばしの間。
その沈黙を破ったのは、ユーリスだった。
「…変なやつ!」
ガーーーン!
ガーーン!
ガーン!…
変な髪のニートに…変なやつって言われた……
「魔王なんか信じられると思うか?油断させておいてバッサリ、もしくは人質にされるかもしれない」
うっ…
やっぱり…信じてもらえませんよね…
「…それに俺は、お前を倒せるほど強くない」
少し悲しげに、自嘲気味にユーリスは笑った。
勇者の弟という称号は私の想像以上に重たいのだろう。
そのプレッシャーに耐えられず勇者の兄弟が闇堕ちしてラスボスと化すゲームを私はいくつもプレイしてきた。
きっと想像できないような、辛い過去もあったのだろう。
その笑顔は、そう思わせるのに充分だった。
だからこそ私は次の瞬間こう言ったんだ。
「じゃあ私があなたを鍛えるから!」
「は?」
「私の無駄に強い力を、あなたが強くなるために使うよ!」
「え、ちょ、えぇ!?」
「でもそうなると、このまちでは厳しいな…あ、魔界の城なら広いし誰にも危害加えないかも!私と一緒に魔界へこない!?」
名案だ!
そう思ってユーリスの肩をつかみ目を除きこむ。
どうせニートなんだし、街にいようが魔界にいようが関係ないよね。
それに彼が居たら、ディロアとルカだけの甘ったるい生活にもならないだろうし、良いことづくしだ。
「私を信じて。魔王としてじゃない、三井由奈として。お願い」
まっすぐ。
まっすぐユーリスを見つめる。
きっと信じてもらえる可能性があるとしたら、もう、これしか残されていない。
まっすぐな思いをぶつけること。
魔王なんて肩書だけで、元々悪意なんて欠片もないんだもん!
きっと分かってくれる!
「…俺にも力をくれるのか?」
しばしの間のあと、ユーリスはこちらをまっすぐに見てそう言った。
「もちろん!」
私は大きく頷いてユーリスに手を差し出す。
「…信じてみるよ。お前は変なやつだから。それに俺には…失うもんなんかないしな」
一瞬迷いながらも、ユーリスはその手を遠慮気味に握ってくれた。
これで!契約成立だ!
ヒャッホイ!
平和な良き国、日本に帰国するのは秒読みかもしれない!
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