三井由奈の1日

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「ルカー!はやいよ!どこに連れていく気!?」 「心配なさらず魔王さま♪しっかり拐わせていただきます。…少し目を閉じて下さい」 「え、でも」 「いいから」 ルカはすぐに耳元でささやく。 バラのような香りに艷っぽい声と暖かい息がくすぐったくて、恥ずかしくて仕方ない。 こんなことばっかりされたら、やっぱり健康的にも精神的にも良くないよ! これ以上されたらたまらないので、私はぎゅーっと目を閉じた。 「良い子ですね」 「だから耳元で囁かないで!」 *** それから、からかわれ続けること10分後。 走ってないのに、走るよりも疲れた… 「着きましたよ、魔王さま。目を開けて」 「うん」     ゆっくりと目を開けるとそこには… 「すごい…すごいすごい!きれいだよルカ!」 そこは、湖だった。 澄んでて、綺麗な水色。 いくつもの木に囲まれ、その葉の隙間からはキラキラと眩しい光が溢れている。 湖の縁には色とりどりの花が咲き乱れていて。 美しい自然という自然を凝縮したようなその光景に私は思わず感嘆の声を漏らした。 いつも高層ビルばかり見ている私の目には全てがそう、まるで、別世界…!   いや、実際別世界か。 しかも魔界。 「これ、なんていうお花かなぁ?あ、今飛んだ鳥は?こっちの木は?…はっ!」 しまった! はしゃぎすぎた! 我に帰ってルカを見ると… いつもの怪しい笑みじゃなくて、慈愛に満ちた、優しい笑みを浮かべてルカはそこに立っていた。 とても、赤い邪神と呼ばれている男とは思えない。 いつものつかみ所のない感じとも違う。 こっちが…本当のルカなのかもしれない。 「ルカ…」 「何ですか?」 「その、さっきは、ルカの遊びなんてろくなことに違いない信用ならない!って思っててごめんなさい」 「そんな風に思われてたんですね。悲しいなぁ」  「でも!こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとう!また、連れてきてほしい」 裾を少しだけキュッと引っ張ると、ルカは一瞬驚いたような顔をしたあと、笑顔で頷いてくれた。 「今度はディロアとユーリスも連れてこよう!」 「それはだめです」 「え?…わっ!」 そう言われた次の瞬間。 ルカの腕が私の腰に回され、ぐっと引き寄せられて距離が近づく。 「ここは、僕と魔王さまだけの秘密の場所ですよ」 いつもと同じ怪しい笑みを浮かべて、ルカはそう呟いた。
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