第3章

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ピリリリリ…… 手元にあった携帯が鳴る。 表示された名前を確認し、私は電話に出る。 『もしもし鬼灯?今日もウォーアイニー』 「/// …っ…切りますよ」 挨拶がてら愛の告白をするのは不意打ち過ぎる。 今の一瞬で耳が赤くなったくらいだ。 『わー待って切らないで!』 ワタワタバタバタと騒ぐ音が聞こえる。 何をしているのでしょう? 『祭り一緒にまわらない?』 ガタンと一際大きな音の後にそう言われる。 「回ってやらん事もないですよ」 携帯を片耳に当てたまま、書類を処理する。 『素直じゃないなー』 ケラケラと笑う声がする。 あちらは時間を持て余しているのだろう。 寧ろ立派な弟子のおかげで時間を余しているのか、擂り粉木の音が聞こえる。 「白澤さんの所は今回 出店しないのですか?」 以前のお盆休みには桃太郎さんと一緒に薬膳粥を売って商売していた。 今年もあるのならば食べたいと思っている。 『今年は薬膳粥は作らないでお茶を振る舞おうと思っているんだ』 珍しいお茶とか体にいいお茶を出す予定だよ。 「…お茶ですか」 『嫌なの?』 思っていた事が声に出ていたらしく、心配するような声が聞こえた。 「嫌だなんて。ただ今年も薬膳粥が出店するものばかりだと思っていましたので」 そう零すと、 『期待を裏切っちゃったようだね。許して? だけど毎年 同じものを売るのはどうかなぁ~?って思ってさ。 これでも桃タローくんと話し合った結果だよ。それに……』 「それに?」 『最近お互いにバタバタ忙しくてデート出来なかったじゃない。 埋め合わせまではいかなくても祭りで一緒に回りたいし』 そういう魂胆か。 白澤さんらしいといえば白澤さんらしい。 「しかし色々なお茶を売るとなると回るどころではないのでは?」 『僕の傍には誰が居ると思っているの?』 「まさか、桃太郎さんに全て任せる気じゃ…」 手にした書類を一旦、元の位置に戻す。 『全てまではいかないけれど、 そこらへんは了承済みだよ』 「仕事しなさいよ」 『これでもしてるよ。 この仕事の鬼』 「鬼ですが何か?」 ため息と共に止まっていた手を動かす。 『少しは休みなよ。 休んだところでバチなんて当たらないんだから』 ねぇ?桃太郎さんに聞いているのか、 確かに鬼灯さんは少し働き過ぎかと…。 心配してくれる優しい桃太郎さんの声が聞こえる。 「…そうですね。大王に相談してから決めようかと思います」
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