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けど、そうであれば一声かけるなり揺すぶるなりと方法はある。
それをしなかったという事は、
思考の渦に飲まれていた私に考慮したか、呆気に取られて遊びに行ったかのどちらかだ。
…後者であって欲しくない。
遊びに行ってたとしても、ほったらかしにしたのは私の責だ。
白澤さんは……悪いか。
けれど1人で行かないで欲しい。
過去に体験した独りは、耐えがたい苦痛を催した。
今は忙しいのもあってか余り孤独を感じる事はなくなったが。
しかしふとした瞬間に心細いというか、物足りないと感じる事がある。
今がそれだ。
足りない安堵感が。モフモフが。
温もりが。白澤さんが。
ガタガタと身体が震え始める。
別に寒くはない。
現にここは地獄なのだから寒さなんて八寒地獄へ行かなければ関係ない。
これは、そう不安で押し潰されそうなのだ。
そこに居れば満たされていた筈なのに、いつの間にかそれ以上を望むようになってて。
…満たされなくなっている。
「鬼灯?」
後ろを振り返ると、そこに白澤さんがいた。
手には林檎飴ならぬ、マンゴー飴。
「は……く…たくさ……」
柄じゃないのは百も承知だが、
やらないのも逆に尺に触る。
私はこれでもかというぐらい白澤さんを抱き締めた。
オロオロ仕出すのかと身構えたが、そんな素振りが来ない。
寧ろ、ざわざわと一声が。
目を見開くと、サッと視線を外す者達。
中には部下達も混ざっている。
サーと血の気が引いたのは言うまでもない。
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