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激しく降り続けた雨は、まるで彼女が流した涙のようだった。
僕は見た。
幼い女の子が暴力を受け、痣だらけ、傷だらけになりながら泣き叫ぶ姿を――。
手や足や、口が暴力を振るう為にあると言うのなら、僕達蛞蝓には無くて正解だったのかも知れない。
だけど…、
そんな光景を目の前にしながら、暴力を振るわれている人を助ける事も、声を掛ける事も出来ない事に、
僕は本当に無力な存在だと思った。
だから、神様に願った。
“例え、声も手も出せなくとも僕はあの子を助けたい”と。
“あの子の為ならば僕は何だってするし…”
“この身を彼女に捧げたって良い!”
“僕はどうなったって良いんだ!”
“それで…、あの子が救われるなら”
“だから、神様、僕にあの子を助けさせて欲しい!”
声にならない声を神様に発信し続けた。祈りが天に届いたのか、ある日、土砂振りの雨が激しく降り注いだ。
数日後、彼女の家の庭に、綺麗な紫色をした紫陽花の花が咲いた。
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