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ある日、
月香ちゃんはお母さんと二人で出掛けて行ったけれど、何故か一人で帰って来た。
出掛けた先で何かあったのか判らないけれど、悲しげに泣いていた。
“大丈夫だよ、月香ちゃん、僕がずっとそばにいるからね”
“だから、お願い、泣かないで”
“月香ちゃんを泣かせる奴は、きっと悪い奴だ。そんなのは僕が許せない”
“月香ちゃんの敵は…”
“――僕の敵だ!”
泣き喚く月香ちゃんに僕は有りっ丈の気持ちを込めた視線を送った。
月香ちゃんに僕の気持ちがきちんと届いているだろうか。
暫くして、
月香ちゃんの家に女の人がやって来た。
月香ちゃんと何か話をした後で僕の話題になった。
そして月香ちゃんは紫陽花の前にくると、
「蛞蝓はとっても可愛いんですよ」
“僕が…、可愛い…?”
初めて言われた言葉だった。
手も足も無く、口もない、ぶよぶよした体の僕が可愛いだなんて。
「それに蛞蝓は私の味方なんです」
そうだよ月香ちゃん、僕は何があってもずっと君の味方だよ。
神様にも約束したんだ。
何があっても月香ちゃんを守るって――。
出来る事を精一杯するって。
例え、僕の身に……。
何があったとしても。
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