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◇
僕はそれからも月香ちゃんの側でずっと彼女の事を見守り続けた。
月香ちゃんは僕達に葉っぱを食べさせてくれたりするけれど、
ある日、月香ちゃんは寂しそうな表情でこう言った。
「ごめんねなめ太郎君。少しの間だけ暗い場所にいてくれる?」
僕達が入った入れ物をどこかに移す積もりらしいけれど、僕はどこにいようと月香ちゃんの味方なので構わなかった。
「大丈夫よ。塩は別の場所に移しとくから」
塩は僕達、蛞蝓にとって猛毒だ。
触れただけで僕達の体をトロトロに溶かしてしまう。
そんな僕達の事にちゃんと配慮してくれていたんだ。
本当に優しい子だな。
僕達の入れ物は大きな扉のある部屋に入れられた。近くに大好きな水の音も聞こえてくる。ここからでは月香ちゃんの姿は見守れないけれど、彼女はずっとこの家にいるから安心だ。
何処からか、ピンポンと奇妙な音がして、何時か聞いた女の人の声がした。
「月香ちゃん、ごめんなさいね、鮫嶋という男の事で聞きたいんだけど」
「はい…」
あの時とは違う話のようだが、月香ちゃんを傷付けるような人間ではないだろうと、安心して僕は眠りについた。
紫陽花の殺意【乱入】
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