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四年前の夏、妹が死んだ こう言うと批難されるだけだろうからあまり口にはしてこなかったがあたしは妹が大嫌いだった 人形のように整った顔立ちにさらっさらの黒髪ストレート、細身で華奢な可愛らしい妹 あたしが小学校5年生の時、土砂降りの雨の日にブランコの下で丸まって震えていた子猫を可哀想だと思い抱いて帰ったことがあった うみゃうみゃと腕の中で動く生き物に何か母性をくすぐられたのか何なのか、"この子はあたしが守らなきゃ"と必死だった 泥付きの子猫を抱いて帰ったあたしの服はもちろん泥だらけで、そんなあたしを見た母親は明らかに怪訝な表情を浮かべた "この子、家で飼えないかな" その一言が喉元まできた瞬間、既に小学校から帰宅していた妹が片手にドーナツを持ちながら玄関まで来て満面の笑みを浮かべた 「にゃーにゃーだっかわいいーねぇママ、お風呂で綺麗にしてあげよ?」 何がにゃーにゃーだ、それにお母さんはたった今この子猫に対して完全拒否的な表情を浮かべていたばっかりなのに少しは空気読め、とか考えていたら「しょうがないわねぇ、うるみとしずくで綺麗にしてあげなさい」と何ともお優しい言葉を母から頂戴した
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