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「結婚式、挙げるか?」
「け、結婚!?」
カラリとした比呂斗の言葉に、目を剥く。
「そういう話じゃないのか?」
「え、いや、その……オレはそういうのは興味ないですし……」
しどろもどろに、何とか答える。
「そ?したくなったら言えよ」
「……ひ、比呂斗っ」
二カッと笑って自分のデスクに向かい始めた比呂斗の背中を呼び止める。
「……それって、ずっと俺と一緒にいてくれるってことですか?」
「はあ? 違うのか?」
何を言っているんだとばかりに、大袈裟に眉を顰めて振り返る比呂斗の姿が、なぜか滲む。
「ち、違いませんっ……」
震える唇を、俺はどうにか釣り上げる。
比呂斗は冷めたような冷徹な瞳で俺を見据える。
だから俺はもう一度言う。
きちんと俺の声が届くようにと。
「違いません」
「……当たり前だろ」
比呂斗は美しい微笑みを浮かべて近寄り、俺の頬の雫を拭った。
……Fin.
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