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「……八木くん、これは?」
既に入籍を済ませ、とっくに “八木” ではなかったが、本人の了承を得てそう呼ぶと、まだ八木がオフィスにいるような錯覚に陥る。
会社で比呂斗の次に会話量が多かったのは、間違いなく八木だった。
その八木は、耳に馴染んだ可愛らしい声で朗らかに笑った。
「室長に。私からブーケトスです」
ブーケトス……?
耳慣れない言葉に、思考が一瞬止まる。
「……お前っ、俺は男だぞ?」
式の後、バルコニーから純白のブーケを投げた八木を思い出した。
水色を主としたこの小さなブーケは、お色直しのカラードレスで身につけていたものだろう。
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