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「私はそうは思いません」
きっぱりと言い切った八木の声は、電話を通してとは思えぬほどの強い意志を感じた。
そうだ。
彼女は可愛らしい外見や声に似合わぬ、芯を持った女性だった。
「室長には本当にお世話になりました。新入社員だった私を社長秘書に育ててくださったのは室長です。
ようやくこれから一人前の秘書として恩返しできるかなと思っていた頃に退職なんて、本当は私も残念なんです。
だから、せめて私から何か差し上げたかったんです。室長の幸せを願うものを。
……室長はどこかプライベートの幸せを諦めていらっしゃる気がして」
八木の思わぬ言葉に、声が詰まる。
まさかそのように思われていたとは、露ほども思わなかった。
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