プロローグ

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久しぶりに訪れた北海道は、風が冷たかった。 千歳空港に降りて、外に出た途端に寒さが身に沁みた。 背中を丸めて駐車場までの短い距離を歩きながら、やはり歳のせいかなあと思う。 「ううっ」と思わず声が出た。 「そういうリアクション、オヤジくさいんだけど」 俺のスーツケースを押しながら、前を歩いている陸斗が振り返る。 思わず睨みつけたのが、痛みを我慢しているようにでも見えたのだろうか。 「ごめん。まだ痛むの?」と聞かれた。 「いや。運動不足なだけだ」 実際に、痛みはなかった。足に後遺症はない。 情けないことに、若い陸斗の歩く速さに着いていけなかっただけだ。
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