プロローグ

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窓を開けて煙草に火をつけた。 「禁煙車なんだけど」 「俺の車だぞ」 「チッ」と舌打ちされる。 「っていうか、半年以上入院してて、なんで辞められなかったの?」 意地を張っているわけではないのだけれど、やめることにも意味がない気がした。 今だって、吸いたくてたまらないわけじゃない。 煙を吐き出すのと一緒に溜息も吐き出してしまいたかった。 ついでに、胸の中途半端なところに引っ掛かっているものを、吐き出してしまいたかった。 できることなら、身に着けているものや、引き摺っているものを、すべて投げ出してしまいたかった。 「なんか、やる気のなさが感じられるなあ」 「父親に向かってそれはないだろ」 「なんで、そうなのかなあ。親父と一緒にいると、運気が落ちそう。頼むから姉貴の前ではテンション上げてくれよ。花嫁の父なんだからさ」
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