21 夢の続き

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「藤木さんこそ、理沙さんに主導権握られそうじゃないですか」 拓也くんが反論する。 「ウチは亭主関白に、決まってるだろ」 「でも、いざというときは、藤木さんより理沙さんの方が強いと思いますよ」 「そうそう。肝心なときに頼りにならない人なんじゃないですか」 まるで学生時代の仲間みたいに、くだらない言い合いをしながら、会場へと向かった。 会場の前で、思わず立ち止まってしまう。 入り口のところに立つスタッフのそばに、大きなウェルカムボードが飾られていた。 私と藤木さんの、ツーショットの写真が使われている。 「こんな写真、なんだか恥ずかしいな」 藤木さんはそう言ったけれど、私は嬉しさと安堵感でいっぱいになる。 「これ……」 使われているのは、懐かしい写真だった。 藤木さんと、初めて二人きりで船に乗ったときのものだ。 でも、私の手元にはもうなくなってしまっていた。
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