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「どうしたの?」と、春香が顔を覗き込む。
無意識のうちに、にやけていた顔を隠すけれど、春香には見破られていたようだ。
「懐かしい思い出に浸っちゃったの?」
「そんなことないわよ」
「もしかして、初めてキスした日の思い出の写真だったりして?」
あまりに鋭い発言に、驚いてしまう。
「そうなんでしょう。この日、船の上でチューなんかしちゃったんでしょう? だってほら、藤木さん、いやらしい顔してるもの」
「そんなわけないだろ」と、藤木さんが言い返す。
いやらしい顔をしているとは思わない。
でも、こうして見ると、始まりの予感のようなものが写っている気がする。
まだ、その先に起こることを予想すらできなかったあの頃。
私はただ純粋に、藤木さんのことを好きになりかけていた。
一緒にいるだけで、笑っていられた。
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