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「残念ながら、船の上ではしてないわよ」と私は言った。
「ってことは、船を降りてからしたってことね」
「愛し合っているんだから、キスの一つくらい普通のことよ」
私は否定することはしなかった。
「春香と拓也くんだって、まだ何もしてないってことはないでしょ? 中学生じゃないんだから」
おどけるように、春香を見る。
春香は、突然に話題を振られて、珍しく動揺しているようだった。
「今日は、私たちのことはいいわよ。二人の特別な日なんだから、余計なことは気にしないで、しっかりやりなさいよ」
背中を押されるように言葉を残して、春香と拓也くんが先に会場へと入っていく。
私は藤木さんと腕を組んだまま、スタッフの合図を待った。
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