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待っていると、中から前谷さんが出てきた。
白い手袋を嵌めている。
他の男性スタッフなら、サマになるのに、なぜかマジシャンにしか見えないのが可笑しい。
「なんだよ、その手袋」
藤木さんも気になっていたらしい。
「オマエたちをエスコートする役目だからな」と自慢気に掲げて見せる。
「それがやりたかったんだろ」
「まあな。それにさ、理沙ちゃんがオマエが軍手を履いているのを見て、カッコイイって言ってたんだよ。俺は軍手より、上品なこれが似合うだろ」
軍手について、前谷さんに話した記憶はない。
でも、現場で作業をしていた藤木さんが軍手を嵌めてフォークリフトを操っていた姿は目に焼き付いている。
「だからって、オマエがカッコつけたところで、理沙がオマエに惚れることは千パーセントないからな」
「人の嫁さんに手を出すようなことはしないよ。春香ちゃんも拓也に取られちゃったし。でもな、今日来てる理沙ちゃんの友達の中にめちゃくちゃ可愛い子がいるんだよ」
はあ?
呆れてものが言えないとは、こういうことを言うのだろう。
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