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「なんだか少し、酔ってきたな」
「本当に少しですか?」
もう何本のビールを飲み干しただろう。
藤木さんは、酔っても顔に出ることはほとんどないのに、今日は目が充血している。
「疲れてるんじゃないですか」
「大丈夫だって。気持ち良くなってるだけだから。それより、ちょっとトイレに行ってくる」
お色直しがないのだから、仕方がない。
退席するタイミングを、待っていたのだろう。
藤木さんは、スタッフと話をしていた拓也くんを手招きして呼びつけると、こっそりと告げて席を立とうとした。
すると拓也くんが、「ちょっと待ってください」と引き留める。
「もう少し、我慢できないんですか?」
「できない」
「だったら、急いで行ってきてください。巻きでお願いしますよ」
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