北山耕平《きたやまこうへい》

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僕は入学当初から、この本館に魅せられていました。この建物に足を踏み入れた時の、自分の足音、人の話し声の響き方や、古い建物特有の、けれど不愉快ではない匂いが、特に気に入っていました。 ふと見上げた窓の、均一ではないムラのあるガラスに、なんだか心が和むのです。 母もこの場所が好きだったかもしれない。 その夢想にいつからかとらわれていた僕は、毎日のように郷土資料研究会に顔を出していました。 .
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