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「お前、仮にも、自分の恋人が死んだかもしれないのにおかしいだろ? その態度、不真面目すぎる」
「園美さんが死んだ実感、ないもの。それに、恋人ではなかった。脅されていたのは私の方だったって言っても、東君は信じてくれないでしょ? ねえ、冷静になってみて? 私に、関係を迫っていたのは園美さんの可能性の方が、高いでしょ?」
「そうだとしたって……」
「死者に対する冒涜? 死体を遺棄してるかもしれない人に言われたくないな」
「そんな事は」
「していない?」
「俺は……。」
「あ、東君黙って」
渋谷がそう言って人差し指を唇に当てた次の瞬間に、あくびの従業員がやって来て、趣味の悪い大柄の赤いチェックのテーブルクロスの上にアイスコーヒーを二つ並べていった。
渋谷はストローでゆっくり中身を掻き回した。
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