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「見殺しになんか、してねーよ!!」
怒りのあまりに立ち上がると、アイスコーヒーの分厚くて重たいグラスが倒れた。赤いチェックにわざとらしい匂いのする茶色の液体が広がる。
「すいませーん!」
渋谷は冷静に店員を呼ぶ。俺が何をしようと驚かないつもりなんだろうか。
店員は慌てて駆けつけてテーブルを片付けた。俺ではなく渋谷がにこやかにお礼を言った。
「東くん。こうしていても、仕方がないから、行きましょ?」
「え? どこに?」
「もちろん、東くんの家よ。園美さんが自殺した場所に連れて行って欲しいの、自殺したの、自宅の敷地内でしょ?」
「何で、俺がそんなことしなきゃいけねーんだよ」
「私がそうしたいからよ。自分の立場、もう少し考えてみたら?」
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