東陸一《あずまりいち》

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小さな子どものように笑う渋谷の声は、俺の不安を、しっかりと形を持った恐怖に変えていった。 この日から、俺は、俺の家族は、渋谷にはいつくばる、奴隷になった。渋谷はあの、動画を、投稿サイトに非公開でアップしていた。何かあるたびに、公開すると、俺たちを脅迫した。なんであんなことができたのか、分からないような、おぞましいことが山ほどあった。 でも、渋谷が死んでしまった今、俺は新たな恐怖におびえている。殺人の容疑者として警察に拘束されているからではない。 俺に命令する渋谷がいない。何を、どうすれば、乗り切れるのかが、俺にはさっぱりわからないからだ。 渋谷が死んだ前日、俺は、渋谷から、自分を罵倒するように命令されていた。そのせいだけではないだろうけど、俺は容疑者になった。 だとすると、渋谷は、自分が殺されること、もしくは殺されるかもしれない事を、知っていたのではないだろうか? .
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