南条拓也《なんじょうたくや》

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◇◇◇ 気づいたら、また、爪を噛んでいた。いくつだかわからない子どものころから、不安なときはいつもそうしていた。 渋谷は俺の爪をみて、笑ったことがあった。 「南条先輩の爪、大きい手に似合わず小さすぎ」 「ダメなんだよな。爪噛む癖治んなくて」 「でも、学校で爪噛んでるとこみたことないですよ?」 「それは……」 学校で、そんな事を誰かに見られて、自分が作り上げたイメージを壊すわけには行かないからだ。自分の設計図通りに人生を進める。それが俺にとってどんなに困難なことなのか、誰も知らなかった。 .
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