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◇◇◇
爪を噛み始めた頃の事は覚えていないけど、小さい頃の酷い暮らしだけは胸に焼き付けている。
築40年だか50年だかの、ボロアパート。部屋の中はいつもぐちゃぐちゃだった。
「あはは。たっくん、こんなとこいた。いつのまにかくれんぼしてたの?しぃ、見つけられなかった」
俺は決まって押入れの下の段にいつもいるのに、しぃちゃんはいつも俺を見つけることができなかった。
「しぃちゃん、おなかすいた」
「だよね。こっちでなんかたべよう」
しぃちゃんは部屋の片付けができない。
冷蔵庫に何が入っているのか分からなくて、食べ物や飲み物をしょっちゅうくさらせる。
買い物も計算が上手くできなくて時々つらい。
施設で育ったことを時々話す。
16歳で父親の分からない子を産んだ。
そう。「しぃちゃん」は俺の母親だ。
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