南条拓也《なんじょうたくや》

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「あれー。ごはんないや。おかずだけでいい?」 「なんでもいい」 レトルトカレーをルーだけ食べるなんて事はしょっちゅうだった。正直、しぃちゃんが炊飯器を完璧に使いこなせるかはかなり疑問だった。 酷い暮らし。だと言ったけど、当時の俺は、それでも幸せだったんだ。 しぃちゃんは俺を叩いたり、怒鳴ったり、絶対しなかった。 「わたしのかぞくは、たっくんだけだよー」 とよく抱きしめてくれた。 ずっとあのままだったら、良かったのかもしれない。と思う。 けれど、こどもの世界は必ず動き出してしまう。 .
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