南条拓也《なんじょうたくや》

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2ヶ月遅れで、小学校に入学できたのは、入学通知に反応のない家庭を、学校の先生が訪ねて来てくれたからだ。 今から考えると、俺にちゃんと戸籍がある事や、住民登録がされていたことも、偶然が重なって起こった奇跡なんじゃないかなと思う。 夕方、ボロアパートをノックしたのは眼鏡をかけた、おばさんの先生だった。 「誰?」 「南第二小学校の澤村です。君は南条拓也くんかな? お母さんとお話がしたいんだけど、今おうちにいるかな?」 「しぃちゃんなら、寝てるよ。きっともうすぐ起きると思うけど。呼んでくる?」 「お願いできるかな?」 澤村先生は、とてもいい先生だった。しぃちゃんが抱えている問題にすぐ気がついて、しぃちゃんを責めるような事は決してしなかった。もしこれが、他の先生だったら、俺は学校には縁のない生活をしていたかもしれない。 .
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