南条拓也《なんじょうたくや》

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しいちゃんが、わんわん泣いたのも、後から納得した。 小学校に行くことで、俺は、俺としいちゃんの生活が異様な物なんだということに気が付いた。 朝はみんな登校の時間よりずっと前に起きて、朝ごはんを食べる。 家にはだいたい『お父さん』がいる。 家族構成的な事は早くに気づけた。 でもそれより少し後に、参観日で他の子のお母さんと、しいちゃんを見比べて、しいちゃんが他の『お母さん』とは違う。ということに焦った。 しいちゃんは、他の『お母さん』よりずっとすべすべした頬をしていた。 他の『お母さん』は自分の事を『しいちゃん』といったりしなかった。 しいちゃんは他の『お母さん』より、ずっと笑っていた。 他のお母さんは『しいちゃん』みたいな子どもっぽい話し方をしなかった。 .
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