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「南条くん。本当なの?」
「……うん」
「そう。じゃあ、三谷くんに謝らないといけませんね」
「はい」
謝るなんて絶対嫌だったけど、三谷に飛び掛かった理由を言いたくなかったから、渋々謝った。
放課後、俺は澤村先生に呼び出された。
「南条くん、もしかして、三谷くんにお母さんのこと、からかわれたりした?」
先生と目を合わさずに下を向いて、上履きの中の足の指をもぞもぞさせた。
「三谷くんが、お母さんの事をからかったなら、三谷くんだって悪い。でも、南条くんは暴力を振るったからもっと悪い。これから、また誰かにお母さんの事を言われたとき、南条くんが同じことをしたら、先生はとても悲しいな」
下を向くのを止めて、先生の目を見た。
「先生、僕、悔しかったんだ。でもあいつの言うことは本当の事だから、何も言い返せなくて、悲しかった」
また下を向いたら、上履きに涙が滲んだ。先生はふう。と大きくため息をついた。
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