南条拓也《なんじょうたくや》

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◇◇◇ 生活保護を受けるようになったのは中三の春からだった。学校の中で、風当たりが強くなる事はなかった。定期的に近所に住んでいる民生委員の井口さんがやってきた。 しいちゃんは、最初井口さんをものすごく警戒していたけれど、井口さんの欠点が、おしゃべりなだけという事が分かると、井口さんに慣れた。 椿ヶ丘に入学することに決めたのは、中学の担任に勧められたからだ。特待生になれば、学費は免除されるし、進学はした方がいいと、熱っぽく言われた。たぶん一人でも多く、椿ヶ丘に合格する人間を増やしたかったのだと思う。 無事に入学できた時、ひとつ階段を上れた気分だった。 もちろん、入学してからも、血のにじむような努力をした。テストと名前の付いたものは、常に一番でないと安心できなかった。 そして家に帰れば、しいちゃんが苦手な家事を引き受けた。 .
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