南条拓也《なんじょうたくや》

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椿ヶ丘に入学してから、本当に充実していた。 いくつか先送りにしている問題はあったけど、コツコツ地道に這い上がれている、実感があった。 そんな、高1の冬休み間近。クリスマスイブだった。 ボロアパートの玄関を開けると、部屋の奥からしいちゃんのクスクス笑う声が聞こえた。 「カオリンは、ほんとおもしろいねえ」 「そんなことないって、しいちゃんの方が面白いよ。私、しいちゃんと一緒にいると癒されるよ。そういうお客さんいっぱいいたでしょ?」 「そうかなあ」 「そうだよ。だから、しいちゃん、かなり妬まれてたよね、JKに。すごくない? ママなのに、女子高生に嫉妬されるとか」 「違うよう。しいがばかだから、いじわるしたんだよ」 「あいつらの、嫌がらせは、しいちゃんが人気者だったからだよ。私、しいちゃんみたいに優しい女の人、他に誰も知らないよ」 「カオリンの方が優しいよ。こんなバカなしいのはなし、ちゃんとさいごまで聞いてくれるんだから」 .
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