南条拓也《なんじょうたくや》

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大きな問題になったのは、四月になってからだ。 昨年度のクラス委員が、準備するのが恒例の入学式。裏方として、ステージの袖にいた。一年の時、同じクラスだった女子に話しかけられた。 「ねえ、南条くんて、去年の新入生代表だったよね?」 「まあね」 「今年は、女子なんだって。しかも、国語の渋谷先生の娘さんなんだって」 「ふうん」 どうして、こんな広がりようもない話を俺にするのか。若干残念に思いながら、ステージの方を見た。教頭先生がそのこの名前を呼んだ。 「一年生代表。渋谷唯香!」 「はい」 しばらくすると、視界にゆっくりその女子が入って来た。 「えっ!?」 「南条君どうしたの?」 「ああ、何でもない、ちょっと知り合いに似てたから。でもたぶん違う」 「そうなんだ。結構かわいい子だね」 「あーそうかな?」 カオリンが椿ヶ丘に入学するだなんて、誰に想像できただろう。 少なくとも俺には無理だった。そう。新入生代表の、国語の渋谷先生の娘の、渋谷唯香こそが、西中の援デリ少女。 渋谷唯香だった。 .
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