南条拓也《なんじょうたくや》

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何にも思わず、渋谷と付き合っているふりをし続けたのは、それが俺にとっても気楽なものだったからだ。 『彼氏彼女ごっこ』は意外と楽しかった。渋谷は変わっているし、時々ゾッとさせられることはあるけど、話し相手としては面白い人間だった。 そして、東が地団太踏んでくやしがっているかもしれないと思えば、いい気分になれた。 東の表情は、春先と比べて、どんどん険しくやつれていった。 失恋が人格形成にこんなに影響を及ぼすものかと呆れたけど、呆れるべきは自分の方だったと後になって思い知ることになった。 .
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