南条拓也《なんじょうたくや》

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そして、渋谷は、緊張の糸が切れた俺がどうなるかも観察していたに違いない。 しいちゃんを殺した俺からは、あれほどあった集中力も、向上心も目標も魔法のように消えてしまった。 今学期で、特待生は打ち切られるだろう。 そして、ようやく供述を始めた、東の両親が、娘の死体損壊遺棄の疑いで逮捕された。ワイドショーに映るその顔は、渋谷が「裕子さん、世一さん」と呼んだ二人に間違いない。 俺が警察に捕まるのは時間の問題だろう。 北山が知っている秘密は、少なくとも俺のものではなさそうだ。 そして、俺は、渋谷を殺したのは、16年前の殺人鬼なんかじゃなく、渋谷の母親である、渋谷先生のような気がしている。 あの二人には、一見しただけでは分からない親子関係があるはずだ。 そして、何かの拍子に、援デリが、先生にばれていたんじゃないだろうか。 それに、渋谷先生の笑顔はいつも目が笑っていない。 .
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