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唯香はあの日から、ずっと私の秘密の友達だった。私の一番暗い部分を全部知っている上重くもなく、軽くもなく、程よく受け止めてくれる。
「私も椿ヶ丘にいくつもり」
唯香がそう言ったから、ますますやる気を出していた。なのに、ママは私が勉強をしようとすると、邪魔をする。
「緋音ちゃん、回覧板まわしてきて」
「緋音ちゃん大変。おしょうゆきらしちゃったから、買ってきて」
「緋音ちゃん、本家に、お中元持っていきましょう」
緋音ちゃん、緋音ちゃん、緋音ちゃん…………。
気が狂いそうだった。そんな私を見て、唯香はこんなことを言ってくれた。
「独り暮らしの友達がいるから、夏休みそこで二人で勉強しない?」
「中学生なのに、独り暮らししてるの?」
「中学生じゃないよ。社会人。昼間は働いてるから、いないし、ね、そうしたら?」
「うん……」
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