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「勉強しよっか」
「うん」
黙々と教科書や、参考書、問題集をめくった。時々、分からないところは、唯香が教えてくれた。
「そろそろ、お昼にしよっか」
「うん。どうする? コンビニ行く?」
「園美さん、冷蔵庫のもの使っていいって言ってたから、なんか作る。苦手な物ある?」
「え? 唯香って料理できる人?」
「うち、お母さん、家事何もしない人だから。うちも母子家庭だし」
「え? そうなの?初耳」
「恥ずかしい話なんだけど、私が10歳の時に蒸発しちゃったの。たぶん、女の人が一緒だったんたと思う」
「へえ。そうなんだ」
「緋音の家は離婚してるんだよね? お父さんに会ってるの?」
「私、会ったこと、ないんだ」
「会ってみたいとは思う?」
「いつもじゃないけど、時々はそうおもうかも」
ママがうっとりと。婿養子の話をするときとか、勉強の邪魔をするときとか、ブラジャーが根こそぎ狩られてしまった時に、父親がいたら、何か違っていたかも。
そう思わない事もない。父親が今もいたら、私に弟がいた可能性だってあったかもしれないのに。
なんで離婚したのか、何度かママに聞いてみたけど、詳しく教えて貰えた事はない。
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