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◇◇◇
椿ヶ丘に入学できたのは、唯香のおかげだと言ってもいい。夏休みが終わってからも、週末や連休は園美さんの所で、勉強できた。
突然園美さんの部屋に行けなくなった時は焦ったけど、場所をフードコートや、図書館なんかにうつしただけだった。園美さんの部屋に行きづらくなった事情を唯香はこう説明してくれた。
「園美さん、彼氏ができちゃって。彼氏が園美さんの部屋に入り浸りみたいで、ゴメンねって謝ってた」
「園美さんに、彼氏が!? えー。なんか意外」
「そう?」
「違うみたいだから言えるけど、園美さんって、唯香の事が好きなんだと思ってた」
「ふふっ。そうなんだ」
「私の勘、はずれちゃったみたいだね。そっか。違うんだ」
「それより、お父さんに会う日、いつにするの?」
「入学式が終わってからにしようと思って」
「制服姿、見せたいんだね」
「それもあるかな」
合格発表の後に、唯香とフードコートでこんな風に祝った。
この先の進学とかが、思い通りに行かないのは目に見えてるけど、3年間の高校生活は楽しみたかった。
つい、話し込んで、遅くなったのがいけなかったんだろうか?
この時の幸せは、本当に長続きしなかった。
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