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あちこち触られて、何かが引きちぎれる音がして、味わったこともない恐怖に、気が狂いそうだった。
もがいて、叩いて、もがいて。すればするほど「何か」がしたいことが、進んでいく。
「もうだめだ」
と思った瞬間に、鼻につんときた。
よく知っている臭いがした。
「アイツ」の臭い。
暗くて顔も分からないのに「何か」が「誰か」なのか、分かってしまった。二重に屈辱だった。
「光信君? ねえ? そうなんでしょ? お願いだからやめて」
「何か」の動きが一瞬止まった。
「何で、分かった? こんなに暗くて、顔もよくわからないのに」
「なんとなく。ねえ、お願いだから、こんなことしないで、こんなの洒落になんない」
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