西山緋音《にしやまあかね》

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シャトーは、古い喫茶店で、煙草の臭いがした。 新聞や、一昔前のマンガ本が本棚に並んでいて、私と唯香が入ると、焦げ茶色のエプロンに、三角巾をつけたおばちゃんが、一瞬おどろいたような顔をしてから、低い声で「いらっしゃい」といった。 案内されるでもなく、空いていたテーブル席の手前に唯香が座り、奥に私が座った。 私たちにとってはとても居心地がいいとは言えない、その喫茶店にお父さんらしき人は、約束の時間どおり来た。 「こんにちは、緋音ちゃんはどっちかな?」 「私です」 お父さんは、背が低くて、髪が薄かった。それでも、自分に似たところはないか、探そうとしたけど、なかなか見つからなかった。お父さんは、少し困った顔をした。 .
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