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シャトーを出ると、唯香は私の肩を叩いた。
「まっずいコーヒーだったね。緋音」
「うん……」
「元気だしなよ。お父さんがあんな冴えないおじさんじゃなくてよかったでしょ?」
「でも、優しそうだった。それに、これで本当のお父さん探そうと思ったら、ママに聞くしか方法がなくなっちゃった。ママに聞いても、本当の事は聞けないと思うし」
「ごめんね。私、お父さん探してみようなんていわなきゃよかった」
「ううん。がっかりしたけど、本当の事が分かってすっきりした。ね、それより、いつからでもいいから、稼ぎたい」
「分かった」
「楽しむ」とは程遠い高校生活の始まりだった。
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