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◇◇◇
夏休みに入った頃だった。待機所になっていたぼろアパートに、あの女が入り始めてから、私の本数が減った。
いくつだがわからないけど、子持ちのシングルマザー。
メイクが下手で、いつも唯香がなおしてあげていた。
「すごいねえ、カオリンは。しいがやるとあんなになっちゃうのに」
「しいちゃんは、もとがいいから、ちょっとだけでいいんだよ。紫とかブルーとか、あんなに沢山瞼に塗ったらだめ」
「そっかあ」
こんな会話になぜかイライラした。自分が指名されず、あの女が指名されて出ていくともっとイライラした。
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