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◇◇◇
唯香が死んだあの日。
私は怒っている唯香に許しを請いに行くはずだった。最後に話した電話の内容はこうだった。
「お願いだから、返して? あの英和辞典の中身を知ってるの唯香だけだよ。どうして、隠したの?」
「どうしてかも、分からないの? 私、緋音にがっかりしたんだよ? 緋音、しいちゃんの財布からお金、抜いてたでしょ? しいちゃんが辞めたの、そのせいじゃない? ねえ、緋音、しいちゃんがウリを楽しんでたからって、体張ってるのは、同じなんだよ?」
「そんな、お金抜くなんて、そんな事私してないよ」
本当は隙さえあれば、どぎついピンクの財布から抜いた。
足し算もまともに出来そうになかったしいちゃん。一度試しに抜いてみたら、騒ぎにもならなかった。
あの女。唯香にだけは話したのか。私が目の敵にしているのは馬鹿なりにわかったって事だね。
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