西山緋音《にしやまあかね》

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唯香のお葬式から、帰ってきた時だった。 「ただいま。ママ? あれ。いないの?」 本家で何かある日だったのかもしれない。ママが不在で、自分の部屋に入ると、ありがちな異変に気付いた。 隠しておいたはずのスクールバッグが、ベッドの上にあって、ファスナーを開けなくてもわかる。中身は空っぽだ。 やられた。 フラフラしながら、まだ無事なブラジャーがないかママの部屋に行った。 パッと見たところなさそうだったけど、一応観音開きの洋服箪笥を開けてみる事にした。 ママの箪笥は小さい時から苦手だった。 今時防虫剤なんてにおいのしないものが沢山あるはずなのに、ママの箪笥は昔から樟脳のにおいがして、それが嫌いだった。 クリーニングの袋から取り出されていない衣類がかけられた奥にある箱が妙に気になった。 .
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