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――でも。本家の三男、どうして、緋音が帰ってくる時間、知ってたんだろうね?――
私は、あの自分を狂わせたあの日の日記を広げた。
――やっと!! これで、緋音ちゃんも運命だと実感できるはず!――
たった一行だけ、書かれていた。その日は、私の排卵予定日だったと、それを見て初めて知った。憎しみだか、怒りだか分からない感情が、水に入れたドライアイスの煙みたいに、吹き出して溜まっていった。
ママは、知っていたのか。本家の三男がどんなに卑劣で、凶暴なのかを。
知ったうえで、私をこの家につなぐ鎖の役割をあの男にさせようとしたの?
あの時、万一妊娠していたら、何が待ち受けていただろう?
恐ろしさに今度は震えた。
私はそっと、ママの観察日記と、自分の英和辞典を、箱の中にしまうと、樟脳臭い箪笥の中にしまった。
ママの事が本当に、憎い。初めてそう思った。
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