東陸一《あずまりいち》

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6月になった。鬱陶しい雨にげんなりしながら学校から帰って、玄関に見慣れない小さなローファーがあった。首を傾げながら自分の部屋に行こうとすると、ねーちゃんの部屋から、ねーちゃんの笑い声がした。 俺がねーちゃんから聞いたこともない類いの笑い声で、何だか気持ちが悪かった。 中2の時につきあって、すぐ別れた彼女の笑い方に似ていた。 俺が喜ぶと思ってるんだか、やることも、話すこともなかったんだか、必要以上に笑ってたんだあの、彼女は。 興醒めだったからすぐ別れた。 ねーちゃんの笑い声は俺を混乱させた。 .
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