東陸一《あずまりいち》

14/107
前へ
/356ページ
次へ
この日のことはそのうち、忘れた。変だったけど、俺にとってはあんまり重要じゃなかった。 西中の女子より、梅雨が明けた、ある日、ねーちゃんが言ったとんでもないことの方がずっと重要だった。 月曜日だったと思う。父さんも母さんもいる朝の食卓。俺はいつもどおりみんなより遅めに座って、箸をとった瞬間だった。 俺の隣がねーちゃんの席。ねーちゃんの正面が父さん。その父さんに向かってねーちゃんは言った。 「お父さん、私、独り暮らししてみたいな」 俺は耳を疑った。ねーちゃんが独り暮らしをしたいなんて、今まで言った事がない。 父さんも、朝イチなせいか、ポカンとしていた。 .
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

735人が本棚に入れています
本棚に追加