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ねーちゃんが食卓を後にして玄関に向かうのを俺は追いかけた。
「ねーちゃん!」
「どうしたの? りーちゃん?」
振り返ったねーちゃんは、綺麗だった。開放感という清々しさがあった。少しだけそれに怯んだ。
「どうしたもこうしたも、ないよ。なんで独り暮らしなんか……」
「驚かせちゃったかな。就職してみてね、初めて息苦しくなったの」
「何が?」
「東の家の子だということが」
「え?」
「私、少しこの家から、離れたほうがいいみたい」
それって、俺からも? 寂しさと悲しさがごちゃまぜになって、辛かった。
「わけわかんねーよ」
「だよね。りーちゃん、りーちゃんは私のこと好き?」
「え? 何でそんな事聞くんだよ」
「ふふ。聞いたことなかったけど、私ね、ずっと、そのことだけは疑ったこと、なかったの」
「え? やっぱりわけわかんねーよ」
「だよね。それでいいの、りーちゃん。私りーちゃんが大好きだよ。きっとずっとそうだから、そんな顔しないで」
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